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女性が社会で活躍するために定められた「女性活躍推進法」は、人手不足や働きやすさの向上等、さまざまな課題を抱える現代の日本において、とても重要な法律です。しかし、法律の名称は耳にしたことがあっても、具体的にどのような法律であるのか、何のために制定された法律なのか、などについてはあまり知られていません。
そこで、今回は女性活躍推進法の概要や目的、これまでの改正内容などについて簡単かつ分かりやすく解説していきます。
女性活躍推進法とは、一言でいうなら「女性が自分の能力を発揮できる社会作りのための法律」です。従来の日本社会は、男性が自分の能力を発揮しながら社会を支える構図でした。しかし、労働人口の減少や女性の社会進出などに伴い、少しずつ「女性が社会で活躍すること」が一般的になっていきました。
女性活躍推進法は、「社会で役に立ちたい」「結婚・出産した後も自分で収入を得たい」といった女性を応援するような法律といったイメージです。
ちなみに、女性活躍推進法には、以下の3つの基本原則があります。
【3つの基本原則】
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基本原則には、主に「性別を理由に昇進などの機会を不平等にしてはいけない」「仕事も家庭も両立できるような配慮が必要」「女性本人の意思を優先する」といった内容が記載されています。
女性の活躍推進法を理由に、女性に過度な労働をさせたり、家庭との両立が難しくなるような業務量を与えることは避けるよう明記されているのです。つまり、女性の活躍を応援しつつ、女性を守るための基本原則と言えます。
女性活躍推進法にはどのような目的があるのでしょうか。ここからは、女性活躍推進法における主な目的を解説します。
女性活躍推進法の目的として、まず挙げられるのが「就業希望でありながら働けていない女性」に配慮することです。働く意思がありながらも、さまざまな事情によって仕事に就けない女性は少なくありません。たとえば、育児・家事と仕事を両立することが難しいケースや、親の介護が理由で働く時間的余裕がないことなどが挙げられます。
しかし、企業側が女性の勤務時間やワークスタイルに配慮できれば、育児や家事、介護などとの両立がしやすくなるはずです。女性活躍推進法をきっかけに、こうしたさまざまな事情を抱える女性が働けるような社会を作れるよう、社会全体で取り組んでいくことを目指していく必要があります。
女性が出産した後も就業を継続できるようにすることが、女性活躍推進法の目的の一つです。一昔前と比べると、近年は出産を機に退職するケースは減りつつあります。しかし、企業側に、育児中の従業員に対する理解がなかったり、そもそも育児をしながら働ける労働環境に整備されていなかったりなど、さまざまな理由で退職を余儀なくされる職場も存在します。
結果的に、就業継続を希望していながら、出産を機に退職せざるを得ないという判断に至ってしまうのです。女性活躍推進法への取り組みとして、女性の取り巻く環境の変化について、企業が理解を深め、そのうえで必要な対策を施していくことが重要でしょう。
女性活躍推進法は、女性の管理職を増やすことが目的の一つです。日本は、一昔前から管理職というと男性がメインでした。しかし、本来は管理職に就く人物は性別を問わず、能力がある人材が選ばれるべきです。実際、世界的に見ても、日本における女性管理職の割合は低水準であり、大きな課題となっています。
女性活躍推進法の誕生に伴い、緩やかな増加傾向ではあるものの厚生労働省が発表している「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」によると、令和4年時点での女性管理職の割合はおよそ12.1%です。まだまだ男女差が大きいため、企業は積極的な女性管理職の採用が求められています。
女性活躍推進法の目的の一つは、男性の育児参加率を増やすことも挙げられます。近年は、男性も育児に参加し、性別にとらわれず夫婦で育児に向き合うことが強く求められています。実際、女性としては「育児と仕事を両立させたい」といった希望があるうえに、男性側も「子どもと触れ合う時間を確保したい」といったニーズがあります。
それぞれの希望を叶えるためにも、男性の育児参加率を増やせるような取り組みは必須です。男性の育児参加率が向上できれば、女性も就業チャンスを獲得しやすくなります。そのうえ、育児と仕事でオーバーワークに陥ってしまう状況も回避できるでしょう。
女性の活躍推進法は、必ずしも女性だけにメリットがあるわけではありません。育児に参加したいという男性の要望も叶えられる法律なのです。
女性活躍推進法が誕生した背景には、日本が陥っている「生産年齢人口の減少」があります。2011年から2024年に至るまで13年連続で減少している状況です。それに伴い、「働き手」も減少しています。
実際、総務省の「我が国における総人口の長期的推移」によると、2005年の生産年齢人口は8442万人でした。しかし、以降は減少傾向にあり、2050年には4930万人まで減少する見込みです。
企業は、現在の人手不足はもちろんのこと、将来の人手不足も視野に入れた取り組みを進めていく必要があるといえます。その取り組みの一つが、女性活躍推進に向けた施策の実施なのです。
女性活躍推進法では、企業に対してさまざまな取り組みが求められています。具体的に、どのような取り組みが求められているのか、以下から見ていきましょう。
女性の活躍推進法において求められている取り組みとして、まず挙げられるのが行動計画の策定です。女性の活躍推進に関する取り組み内容をまとめた「一般事業主行動計画」を策定します。
行動計画を策定するためには、まず社内の現状について把握することが重要です。女性の採用比率や女性管理職の比率、性別ごとの平均勤続年数、性別ごとの労働時間などは、最低限必要な情報となります。
また、改正女性活躍推進法(2022年7月施行)によって、上記の情報に加えて、常時雇用従業員数が301人以上の企業に対し、男女の賃金の違いについても把握するよう定められています。
現状の把握が完了したら、調査内容をもとに具体的な行動計画を作成していきます。たとえば、「計画期間」「数値目標」「取り組み内容」「取り組みの実施時期」などです。現実的かつ女性の活躍に繋がる有意義な計画の作成を目指してください。
行動計画の策定が完了したら、社内外への周知を行いましょう。社内への周知は、職場への掲示や電子メールでの共有、資料の配布などが一般的です。社外に周知する場合は、地域の広報誌や日刊紙、自社のホームページへの掲載が主となります。また、厚生労働省が運営している「女性の活躍推進企業データベース」への掲載もおすすめです。
女性の活躍推進法の制定に伴う取り組みとして、女性の活躍に関する情報の公表が企業に求められています。公表が必要な情報は以下の通りです。
【女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】
【職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備】
上記のうち、常時雇用の従業員数が301人以上の企業は「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」から2項目の公表が求められています。(男女の賃金差異を含む)また、「職業生活と過程生活との両立に死する雇用環境の整備」からは1項目以上選んで公表しなければなりません。
一方の常時雇用の従業員数が300人以下の企業は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」「職業生活と過程生活との両立に死する雇用環境の整備」のいずれかの項目から1項目以上を選択して公表すれば良いとされています。
義務ではないものの、女性活躍推進の取り組みの一環として、えるぼし認定の取得制度があります。えるぼし認定とは、行動計画の作成や女性の活躍推進に向けた取り組みを行っている企業に対する認定です。厚生労働省から、えるぼし認定を受けることができます。
えるぼし認定が取得できれば、「女性が働きやすい職場」「従業員のために対策を行っている会社」といったイメージアップを図ることができます。
ちなみに、えるぼし認定と似ている認定として「くるみん認定」があります。くるみん認定は、子育て中の従業員に対するサポートが充実している企業に与えられる認定です。出産や育児などの支援制度・体制が整っていることが前提とされています。
えるぼし認定もくるみん認定も、女性活躍推進の取り組みの一環であるため、ぜひ取得を目指してはいかがでしょうか。
女性活躍推進法は、2020年以降に何度も改正が行われてきました。ここからは、女性活躍推進法の改正内容について詳しく解説します。
2020年4月に、常時雇用の従業員数301人以上の企業に対し、行動計画の策定方法についての改正がありました。同年の6月には、情報の公表方法についての改正があり、比較的規模の大きな企業の対応に関する変更がありました。
対象企業として該当する場合には、情報公表の際に「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の各区分から1項目以上選んで公表することが求められています。
2020年6月の改正では、プラチナえるぼしの創設がありました。プラチナえるぼしとは、女性の活躍に関する取り組みが特に評価できると判断された企業に与えられる認定です。プラチナえるぼしの認定を受けられるのは、以下に該当する企業です。
【プラチナえるぼし認定基準】
「女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準」の項目は、「労働時間等の働き方」「管理職比率」「採用」「継続就業」「多様なキャリアコース」が該当します。
2022年の4月に施行された改正では、「行動計画の作成・届出」及び「女性の活躍に関する情報公表」を義務とする対象事業主が拡大されました。
以前は、常時雇用従業員数が301人以上の企業に限定されていましたが、改正に伴い常時雇用従業員数が101人以上の企業も対象となったのです。
2022年7月の女性活躍推進法の改正では、女性の活躍に関する情報公表の項目が追加となりました。対象となるのは、常時雇用従業員数が301人以上の企業です。
新しく追加された項目は「男女の賃金差異」であり、男性の賃金に対して女性の賃金の割合がどれくらいであるのかを公表しなければなりません。
ここからは、女性の活躍推進に配慮するための、おすすめの取り組みについてご紹介します。「女性活躍推進のために何をしたら良いのか分からない」とお悩みの方は、ぜひ以下の取り組みを参考にしてみてください。
女性の活躍推進に配慮した取り組みを実施したい場合、可能な範囲で在宅勤務制度を導入しましょう。現代の女性の抱える課題として「家庭と仕事の両立が難しい」といったものがあります。しかし、在宅勤務が実現できれば、出勤にかかる移動時間を削減でき、家庭に費やす時間を確保することが可能です。
結果的に、家庭と仕事の両立を実現しやすくなります。また、お子様が小さいうちは、体調不良に伴い親も欠勤せざるを得ない状況は多いです。在宅勤務であれば自宅で子どもを看病しながら仕事を進められる場合もあり、企業・女性従業員それぞれにメリットがあります。
女性の活躍に配慮した取り組みとして、おすすめなのがサテライトオフィスやコワーキングスペースなどの活用です。女性従業員の中には、「在宅勤務では集中できない」「在宅勤務をするための設備が不十分」といった場合もあります。一方で、「通勤にかかる時間が長い」といった問題もあると、結局課題が解決できないまま出勤を強いることとなってしまうかもしれません。
しかし、サテライトオフィスやコワーキングスペースなど、さまざまな場所に展開されているワークスペースを活用すれば、「在宅勤務が難しい」といった事情をカバーできます。サテライトオフィスやコワーキングスペースは、インターネット環境が整っているうえに、コピー機やデスク、チェアなど働くにあたって必要な設備も完備されています。
在宅勤務の環境を整えるために企業が手間やお金をかける必要もなく、コストを最小限に抑えやすいのがメリットです。女性従業員の自宅近くのサテライトオフィスや、コワーキングスペースを契約し、のびのびと働けるように配慮しましょう。
ちなみに、静岡県富士宮市では、サテライトオフィス及びコワーキングスペースでの拠点開設を推進しています。女性の活躍推進に向けた取り組みとしての活用はもちろんのこと、地方への進出や新事業の展開などをお考えの際には、ぜひ一度、富士宮市でのサテライトオフィスやコワーキングスペースの利用を検討してみてください。
【富士宮サテライトオフィス】
窓口 :富士宮市 産業振興部 商工振興課
電話番号:0544-22-1154
公式HP :https://fujinomiya-so.com/
【Connected Studio i/HUB】※コワーキングスペース
住所 :静岡県富士宮市大宮町31 澤田ビル1F/2F
営業時間:9:00~18:00(月額会員は24時間利用可能)
休業日 :土曜日・日曜日・祝日・その他
電話番号:0544-66-6880
公式HP :https://connectedstudioihub.com/access/
女性の活躍推進に向けた取り組みとして、ぜひおすすめしたいのがフルフレックス制の導入です。コアタイムを設けていない働き方であり、深夜や早朝など時間を問わずに業務できるのが魅力です。
家事や育児の時間と調整しながら自分の業務時間を調整できれば、子育てしやすい働き方の実現につながります。また、女性だけではなく、男性も家事や育児に参加する機会につながるため、女性従業員だけではなく、男性従業員に対してもフルフレックス制度はメリットが大きいといえます。
女性社員へのリーダー育成研修の実施は、女性の活躍推進に向けた取り組みとしておすすめです。企業側がいざ女性管理職を増やそうとしても、女性従業員がそれを拒否する事例が少なくありません。
理由として挙げられるのは「リーダーを担う自信がない」「管理職についたら忙しくなりそう」などです。そのため、女性社員にリーダー育成研修を受けてもらい、イメージと現実の違いについてきちんと理解してもらう機会を作りましょう。
また、企業側としても、女性管理職が働きやすいように残業時間を見直したり、裁量労働制を設けたりするなど工夫しながら女性従業員の理解を得ることが大切です。
今回は女性活躍推進法についてご紹介しました。働く従業員にとっても、企業にとっても女性の活躍推進を目指すことにはメリットがあります。
とはいえ、具体的にどのような取り組みを実施すべきか悩む現場も多いものです。自社での取り組み内容に迷ったときには、ぜひ本ページのアイデアをヒントにしてみてください。在宅勤務制度の導入やサテライトオフィス・コワーキングスペースの契約など、おすすめの取り組み内容はたくさん存在します。
ぜひ、今回ご紹介した内容を参考にしながら、自社にマッチする女性活躍推進の取り組みを模索してみてはいかがでしょうか。
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