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地方にサテライトオフィスを設置すると、採用の選択肢を広げられるだけでなく、BCP強化や、働き方の柔軟性・生産性の向上にもつながります。一方で、運用ルールが曖昧なまま始めると「利用されない」「管理が回らない」といった失敗も起こりやすいのが注意点です。
そこで、この記事では、地方サテライトオフィスの導入によるメリットや成功事例、活用できる補助金について解説します。あわせて、従業員の利用率を高めるための運用ルールについても触れていくため、参考にしてみてください。

地方にサテライトオフィスを設けることは、単純に「働く場所を増やすだけ」ではありません。実際には、採用面や万が一の災害、費用面などにおいてさまざまなメリットがあります。
まずは、地方にサテライトオフィスを設けるとどのようなメリットが得られるのか、以下から見ていきましょう。
地方にサテライトオフィスを設けることで、採用で有利になりやすいといったメリットがあります。
地方拠点を持つことで、人材探しを「本社への通勤圏」から「居住地ベース」へ広げられるからです。
都市部への転居を前提にしないため、育児や介護などで長距離の移動が難しい層や、地元にとどまることを希望する層、U/Iターン希望者にアプローチしやすくなります。
採用目的で設置する場合は、職種(常駐が必要か)/出社頻度/配属・育成の設計を先に決めておくと、企業と人材の間に生じるミスマッチや早期離職のリスクを軽減できるでしょう。
働く場所や情報、拠点が本社のみに集中していると、地震や台風といった災害リスクのほか、停電、交通麻痺などのリスクに弱くなる傾向にあります。実際、何らかのトラブルにより、「オフィスに入れない」「通信が落ちる」といった可能性があるでしょう。結果的に、業務がストップしてしまい、企業の損失につながってしまうことも考えられるのです。
地方にサテライトオフィスとして、会社の機能を分散させておけば、災害の影響を最小限に抑えやすくなり、業務を継続しやすくなります。
地方にサテライトオフィスとして拠点を設けることは、在宅勤務によるデメリットを解消できます。たとえば「自宅では集中しにくい」「家族がいてリモートで会議がしにくい」「オンオフの切り替えが難しい」などは、在宅勤務のデメリットとして挙げられます。
また、サテライトオフィスを導入すれば、近隣の従業員は遠方の本社まで毎日出社することはありません。そのため、通勤による負担や移動時間の問題を解消できます。つまり、在宅勤務と出勤の中間に位置し、それぞれのデメリットを解消できると言えるのです。
従業員としては、自宅近くに作業環境が確保できれば、通勤時間を短縮しつつ、集中して業務に取り組める環境を得られます。「本社への出勤が難しい」「自宅の業務環境の整備が不十分」といった従業員にとっても大きなメリットでしょう。
地方サテライトオフィスは、本社の増設や高い賃料などが不要になる点がメリットです。本社として、必要な機能だけを分散できるため、設計次第ではコスト削減につながります。
例えば、出社率が下がっているのに本社面積が変わらないケースでは、地方拠点の導入と合わせて「本社の席数・フロアの見直し」で必要に応じて縮小すると適切なコスト削減につなげられるでしょう。
また、採用面では従業員の都市部への転居費を削減できますし、働き方の面でも従業員の通勤費や出張費などのコストを見直せます。
コスト面に課題がある企業は、サテライトオフィスでどの程度の改善効果を期待できるのか、シミュレーションしてみるとよいでしょう。
地方にサテライトオフィスを設けることで様々なメリットが得られる一方、注意したいデメリットも存在します。
具体的に、どのようなデメリットがあるのか、以下から確認していきましょう。

サテライトオフィスを設置するデメリットとして、まず挙げられるのが従業員間のコミュニケーション機会が減少しやすいことです。拠点が分散することで、仕事の合間の会話やこまめな確認タイミングが減りやすくなる可能性があります。結果的に、「お互いに情報が届けられていない」「確認不足によるミスが増える」といった状況に陥るリスクがあるのです。
実際、業務に関する共有や優先順位などのすり合わせができておらず、認識のズレが溜まってしまうことは珍しくありません。場合によっては、手戻りや意思決定の遅れにつながることもあります。
そのため、対策として、各拠点間で「いつ・何を・どの手段で共有するか」を決めることが重要です。決定事項は必ずテキストで残す、朝会はオンラインで統一する、週1回はチームで同じ拠点に集まるなど、コミュニケーションの設計をルール化しておくと報連相不足や情報共有不足を防ぎやすくなるでしょう。
オフィスを分散させると、管理職が「普段の業務態度や仕事の姿勢も含めた成果」ではなく「目に見える成果のみ」で判断することが増えます。部下が同じ環境で働いていないため、普段の業務の様子が見えにくいことが理由です。
そのため、企業は評価制度や育成、メンタルケアの仕組み・方法を変えないと「本社にいる従業員」と「サテライトオフィスに勤務する従業員」の間で不公平が生じてしまいます。
企業が検討すべき対策としては、職務の定義と評価基準を明確にすることが挙げられるでしょう。例えば、1on1の実施頻度を調整したり、評価の仕組みを公平にすることが重要です。
とくに、新入社員や異動してきた従業員、転職して間もない従業員は孤立しやすい傾向にあります。そのため、オンボーディング期間だけは出社頻度を上げたり、メンターを固定したりするなど、従業員一人ひとりに向き合うための仕組みを設計しましょう。

拠点が増えるほど、端末や入退室の情報、印刷物など、管理するものが増えていきます。セキュリティ面のルールが甘いと、情報漏えいにつながりやすく、深刻な問題に陥る可能性もゼロではありません。
また、他の利用者がいる環境では、PC画面や資料の覗き見、オンライン会議中の会話漏れ、共用ネットワークでの不正アクセスなどで、さまざまなリスクが増えます。
そのため、企業は端末の暗号化や、持ち出しルール、画面の覗き見対策、個室ブースの確保など、運用と設備をセットで整備する必要があります。
あわせて、以下の項目もチェックしておきましょう。
仮に、要件を満たさない場合は、用途を限定するといった判断も必要です。
サテライトオフィスは、設置すれば利用してもらえるわけではありません。「目的が曖昧」「使う理由がない」「予約や入退室が面倒」といった運用では、せっかくサテライトオフィスを設けても従業員に利用してもらえない可能性があります。
特に、在宅勤務が問題なく回っているチームにとっては、わざわざ移動してまでサテライトオフィスに出勤する動機が弱く、固定費だけが残ってしまいます。
サテライトオフィスを初めて導入する際には、最初から「常時利用してもらうこと」を狙わず、利用シーンを絞っていきましょう。たとえば、集中作業日、研修・採用面談、顧客訪問の前後、プロジェクトのキックオフなど、使う業務を先に決めておくのです。
また、予約や入退室をなるべく簡単にし、利用状況(席稼働・会議室稼働)を可視化して、必要に応じて席数や形態を見直す運用にすると失敗しにくいでしょう。

地方にサテライトオフィスを設けるにあたり、「地方ならどこでも良い」といった考えは失敗を招くリスクがあります。目的に対して条件が合わないと、期待した効果が出ません。
採用目的なら人材市場や職種の適性、交通の利便性が重要ですし、BCP目的なら災害リスク分散になっているか(同時被災の可能性)も見ないといけません。
さらに、居住支援や保育・医療など生活インフラが弱いと、U/Iターンの定着率に影響します。
地域を選ぶ際には、以下の点をよく確認しておきましょう。
上記の項目を確認し、候補地を比較してみることが重要です。
地方にサテライトオフィスを設けるにあたり、知っておきたいのが補助金や支援制度の存在です。地域によって内容は異なるものの、サテライトオフィスの設置を検討する企業に向けて、さまざまな補助金・支援制度を設けているケースが多いです。
ここからは、地方のサテライトオフィスに関連する補助金や支援制度について解説します。
サテライトオフィスに関する補助金・制度の名称は地域で異なりますが、支援の種類は大きく次の4つに分けられます。
【賃料補助】
月額賃料の一定割合を一定期間支援するタイプです。小規模でスタートするケースと相性が良い一方、対象期間終了後の固定費にどう対応するか(本社縮小・利用率・採用効果など)までの計画が必要です。
【改装・設備投資補助】
初期費用を削減しやすいのがメリットですが、一方で対象が「工事費のみ」「設備のみ」など細かく分かれることが多いです。コワーキングスペースの利用は対象外になりやすいので、形態選定とセットで確認する必要があります。
【雇用支援】
新規雇用人数や雇用維持、移住者雇用などに条件が付くことが多いです。求人票や雇用契約の設計に影響するため、採用担当と早めにすり合わせることがおすすめです。
【移転・進出支援】
要件は厳しめな場合が多いものの、支援額が大きくなるケースがあります。投資額や雇用規模などの最低ラインが設定されていることが多いので、要件に該当するかを早めに確認することが重要です。
制度を比較する際に見るべきポイントは、「その制度が使えるか」「申請が間に合うか」「落とし穴がないか」の3つです。具体的なチェック項目は以下の通りです。
| チェック項目 | ポイント |
| 対象経費の範囲 | 賃料、共益費、敷金礼金、内装工事、什器、通信回線、セキュリティ、引っ越し費用、人件費…など、どこまで対象か。 |
| 対象者要件(申請できる企業の条件) | 本社所在地、業種、資本金、従業員規模、創業年数、過去の補助金採択歴、地域内の拠点有無など。 |
| 事業要件(何を達成すればよいか) | 雇用人数、稼働日数、事業継続年数(例:◯年間撤退不可)、拠点面積、投資額、地域との連携(地元採用・発注)など。 |
| 期限・スケジュール | 公募期間、交付決定の時期、事業実施期間、実績報告の締切。
重要なのは、交付決定前の契約・発注が対象外になるタイプかどうか(これで事故が多い)。 |
| 補助率・上限・下限、支払いタイミング | 補助率(1/2など)、上限額、最低投資額、支払いが「後払い」か(キャッシュフローに直結)。 |
| 併用可否 | 国・都道府県・市町村で併用できる場合もあれば、同種の補助は不可のこともあります。 |
地方が整備しているサテライトオフィス関連の補助金や制度は、以下のようなものが挙げられます。
【富士宮市】
出店に関する補助金として、最大100万円の補助、新築であれば上限200万円の補助を行っています。また、移住者支援では最大200万円の助成を受けることが可能です。
自治体窓口での相談も可能であり、「どこにサテライトオフィスを設置できるのか」「採用支援と併せて検討したい」といった相談も可能です。
◆富士宮サテライトオフィス
窓口 :富士宮市 産業振興部 商工振興課
電話番号:0544-22-1154
公式HP :https://fujinomiya-so.com/
【徳島県】
法人・個人事業主向けに、サテライトオフィスの導入支援を実施しています。備品購入費や旅費交通費などを対象に100万円までの補助を受けることが可能です。支援の範囲はそこまで広くないものの、要件・要項が細かくないため、申請しやすいといったメリットがあります。
◆企業支援課 新産業立地室
窓口: 徳島県 経済産業部
電話番号:088-621-2326
公式HP: https://www.tokushima-workingstyles.com/
【和歌山県】
奨励金として、最大3億円を受け取れるのが特徴です。大手企業や大規模事業のサテライトオフィスの設置先としておすすめできますが、「正社員21人以上」「年間売上高が正社員1人あたり1200万円以上」などの要件が設けられています。オフィスの賃借補助金や人材確保補助金など、さまざまな補助金制度が揃っているのが魅力です。
◆企業政策局 企業立地課
窓口: 和歌山県 商工労働部
電話番号:073-441-2748
公式HP: https://ritti.pref.wakayama.jp/ict/support/
ここからは、地方のサテライトオフィスにおける導入・成功事例について解説していきます。自社で導入した場合の参考として、以下をチェックしてみてください。
Sansanは徳島県神山町に、古民家を再利用したサテライトオフィス「Sansan神山ラボ」を開設し(開設年:2010年)、開発拠点としての運用に加え、合宿・研修などにも活用しています。
開設の狙いとして、同社は「新しい働き方を体現する」ことや、職住近接・静かな環境での集中による生産性向上などが挙げられます。
地方拠点を単なる分室ではなく、働き方の実験場・集中拠点とした点が、継続運用につながった理由と考えられる事例です。
セールスフォースは総務省の「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参画し、和歌山県白浜町でクラウド活用とテレワークの有効性検証を進めました(2015年7月〜2016年3月末の実証)。
白浜町側の事例紹介では、サテライトオフィス整備・従業員の移住/長期派遣・テレワークツール活用の検証を通じて、生産性向上の有効性を示す結果が出たこと、さらに実証後は視察が200件超に増え、施設が満室となり次のオフィス整備に繋がったようです。
「オフィス環境」だけでなく、地域との接点づくりや生活面まで含めた支援(住居・家族の手続き等)をセットで設計したことが、定着と拡大を生んだポイントです。
参考:セールスフォース・ドットコム、総務省による地方創生に向けた「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参画
リテイルテック事業を展開するフェズは、2019年4月に最初の地方拠点として島根県大田市にサテライトオフィスを開設し、東京本社で受注した案件の運用業務などを担当する体制を作りました。
拠点選定の背景として、島根県・市町村の支援が手厚く、家賃や人件費の補助がある点が大きかったことが挙げられるようです。
また、採用面では都市部より競争が少ないこと、行政連携の支援もあり、コストを抑えつつ優秀な人材を確保しやすいとのことでした。
「地方で完結する仕事」ではなく「本社の業務を地方に移す(運用・広告等)」設計にしたことで、地方拠点を事業運用に組み込みやすくした点が成功のポイントとして考えられます。
ここからは、地方にサテライトオフィスを設けるにあたり、チェックしておきたい項目をご紹介します。いざ導入・運用してから「うまくいかない」「必要性を感じられない」といった事態に陥らないよう、以下をチェックしてみてください。
サテライトオフィスを設けるにあたり、目的が「採用」であれば、欲しい人材と希望しているエリアにその人材がいるかを確認しましょう。
たとえば、近隣大学・高専・専門学校の学部系統、地域の主要産業(IT、製造、観光、医療など)、同業他社の集積、移住人材の流入状況などが確認すべき部分になります。
また、採用市場は「人数」だけが指標ではありません。「採用チャネルが回るか」も重要なポイントです。自治体の移住支援窓口、地域の人材会社、コミュニティとの接点が作れるかを確認しておくことで、採用スピードが変わります。
なお、U/Iターン採用を狙うなら、リモート前提の職務設計と、入社後の育成・評価の仕組みまでをセットで検討しましょう。

地方にサテライトオフィスを設けるにあたり、アクセスの良さは必須です。とはいえ、アクセスは「通いやすさ」だけでなく、運用コストと拠点の使われ方も含めてチェックする必要があります。とくに、以下の3つは確認が必須のポイントです。
サテライトオフィスとして設けた拠点を「集まる場所」として使うなら、主要駅から徒歩圏、あるいは車移動が前提でも駐車場や移動手段が確保できることが重要です。
アクセスが悪い場所は固定費が安くても、結局「行くのが面倒」で利用率が下がりやすいため、導入目的と照らし合わせて、許容ラインを決めておきましょう。

通信・IT環境の品質や充実度は、業務の継続のしやすさだけでなく、生産性にも大きく関わります。最低限、回線の安定性、バックアップ体制、オンライン会議の品質は確認しておきましょう。
また、コワーキング等を利用する場合は「共用Wi-Fiのみ」だとセキュリティ要件を満たせないことがあるため、専用回線やVPN前提にできるか、入退室・ゲスト管理がどうなっているかも要チェックです。
各企業に設けられた情報システム部門等が求める標準(端末管理、MDM、認証、ログ取得)が担保できるかを、契約前に確認しておくとトラブルを軽減しやすくなります。
BCP目的で拠点を置くなら、「地方であること」だけではなく、本社と同時に被災しにくい場所であるかがチェックポイントです。地震や津波、洪水、土砂災害などのハザード、停電リスク、避難経路、建物の耐震性を確認しましょう。
また、BCPは場所だけでは成立しないので、非常時に「どの業務を」「誰が」「どの環境で」継続するかを決めることも重要です。必要な権限やデータアクセス、代替連絡手段のほか、電源まわりまでしっかりと設計しましょう。
自治体支援は金額だけでなく、立ち上げのスピードと成功率に関わります。賃料や改装、雇用、移転などの補助の有無に加え、伴走支援の手厚さをチェックしてみてください。
ただ、注意点として、補助金には「交付決定前の契約は対象外」「一定期間の撤退不可」などの条件が付きやすいことが挙げられます。
制度を使うなら、スケジュール(公募、交付決定、実施、実績報告)に合わせて契約や発注を組み直す必要があります。そのため、早めに自治体窓口へ相談し、要件と段取りを確認しておくことが重要です。
サテライトオフィスの設置に伴い、採用や人員配置を伴う場合、生活環境は確認が必須の項目です。生活環境が、従業員の「定着率」を左右するからです。
家賃相場や空き物件の状況、保育園の入りやすさ、医療機関の有無、交通手段などまで確認しておくと、配属後の不満を軽減しやすくなります。
今回は、地方にサテライトオフィスを設けるメリットや補助金関連、導入事例などについて解説しました。オフィスの常識としては「都心部に拠点を設けること」が挙げられますが、現代ではニーズの変化に伴い、さらに柔軟な選択肢が求められている状況です。
とくに、人手不足に悩む企業や、定着率が低い企業、コスト面の課題がある企業にとって、サテライトオフィスはそれぞれの問題を解決するための選択肢になるかもしれません。
働き方の改善が必要であると感じている企業は、ぜひ地方へのサテライトオフィスの設置を検討してみてはいかがでしょうか。
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